【世界バレー5位】真鍋監督就任で女子バレーは何が変わった?

2010年のロンドン五輪で女子バレー 日本代表を銅メダルに導き、2016年のリオデジャネイロ五輪後に監督を勇退していた真鍋政義監督。2021年から再び監督に就任し、チームを牽引しています。

真鍋政義監督の前任は史上初の女性五輪監督となった中田久美さんでしたが、2021年に開催された東京五輪では1勝4敗、12チーム中10位で25年ぶりの予選リーグ敗退と厳しい結果となりました。

その中田久美前監督からバトンを引き継ぎ、真鍋政義監督が就任してからはチームも好調を維持しています。そこで、今回は日本女子バレーが好調な理由を監督交代による変化を踏まえてまとめていきます。

真鍋政義監督就任後の3つの大きな変化

中田久美前監督から真鍋政義監督に代わり、大きく変更したのが次の3つです。

  • システム、戦術
  • 若手の台頭
  • コミュニケーションの深化

順番に紹介していきます。

監督交代による変化①システム、戦術の変更

真鍋政義監督と中田久美前監督の大きな違いはシステム、戦術の違いにあります。

中田前監督はデータを参考にしつつも、基本的には80年代・90年代に主流だった低く速いレシーブ(高速レセプション)に拘っていました。その結果、アタッカーは時間的な余裕をもらえず手打ちになり、要所でブロックにシャットアウトされることが多くありました。

一方の真鍋監督体制下では、しっかりと高いレシーブをすることを重視しています。時間的な余裕を得た4人のアタッカーが同じテンポで助走に入る(シンクロ攻撃)ことで、相手ブロックの迷いを生じさせる攻撃が可能になります。

この戦術は世界的なトレンドでもあり、東京五輪で正セッターだった籾井あき選手は「常に4枚攻撃ができる。トスの前にスパイカーの助走と相手ブロックを視野に入れる時間も生まれるので助かる」と効果を語っています。

真鍋監督再就任後、初の大会となったネーションズリーグ(2022年6~7月)では、バックアタックを絡めた素早い攻撃が機能し、初戦から8連勝と快調な滑り出しを見せ、東京五輪で失った自信を少しずつ取り戻していきました。

監督変更による変化②新たな若手選手の台頭

これに関しては、中田久美前監督が蒔いた種が出てきているとも言うことができます。東京五輪では、エースの古賀紗理那選手が怪我で交代をすると、その穴を埋められるほどの選手が育ってきておらず、苦戦を強いられることとなりました。

一方、2022年9~10月に開催された世界バレーでも古賀紗理那選手は怪我で負傷交代をしましたが、その穴を石川真佑選手や井上愛里沙選手、林琴奈選手らが埋めていました。さらに、今後日本代表を引っ張っていく選手の1人になるであろう宮部藍梨選手も台頭してきています。

東京五輪のように「勝たなければいけない」大会が続くと選手の育成も難しいところですが、ぜひこれからの日本代表を牽引するような高校生選手が1人でも多く出てくると、代謝もうまくいくのでしょうね。パリ五輪まで2年を切っていますが、ここからまた別の若手選手が台頭してくることが期待されます。

監督変更による変化③コミュニケーションの深化

真鍋政義監督といえば情報をリアルタイムで更新、精査、活用するITバレーですが、監督として最も優れた能力はコミュニケーション能力といえます。女子チームに男性監督という難しさがある中で、選手との信頼関係を築き、選手全員が持っている力を存分に発揮しています。

真鍋監督がITバレーをするようになったのも、練習や試合での選手の動きを数値化することで不公平なく選手に出場機会を与えるためだったそうです。そういったデータを活用することでよりクリティカルな指導をすることもでき、平等感を持って選手は監督と接することができるようになりました。そこからは、選手一人一人に監督自身が興味を持ち積極的にコミュニケーションを取るようになっていきました。

今大会大車輪の活躍を見せた石川真佑選手も監督との信頼関係を感じられる秘話を話してくれています。それまではお団子にまとめていた髪形を、ポニーテールの三つ編みスタイルに変更しましたが、それも「ブラジル戦前日に真鍋監督から提案された」からだそうです。試合前のルーティンにあえて変化を持たせることと、イメチェンを図る目的もあったと明かしています。

選手と監督の信頼関係がきっちり構築できているからこそ、それまでやっていなかったことを取り入れることができるようになったのでしょうね。

まとめ

東京五輪で10位とふるわなかった女子バレー日本代表ですが、中田久美前監督から真鍋政義監督に交代してから、チームは徐々に自信を取り戻してきており、先日行われた世界バレーではベスト8(総合5位)入りしました。

開幕まで2年を切ったパリ五輪で、2012年のロンドン五輪に続くメダルを獲得するために真鍋監督のもと再出発を果たした、女子バレー日本代表。ここからはVリーグで個人の力をつけ、素晴らしい結果を見せてもらえるよう期待しましょう!